1-F21インチ/ME880タイヤ
2-クローム・スプリンガーフォーク
3-グリメカ・ブレーキレバー
4-5インチ・ライト
5-パウコ/5インチ・ドッグボーン
6-ドラッグバーハンドル
7-スポーツスタータンク
8-ラウンド型・オイルタンク
9-ワンオフ・ソロシート
10-5インチ・フラットフェンダー
11-ワンオフ・フェンダーステー
12-ドラッグバーマフラー
13-1.5インチ・ベルトドライブ
14-セルモーター
15-ミッド・ステップ
16-SUキャブ
17-キャットテールランプ
18-エンジン・ミッション/オーバーホール
19-女性カラーペイント


2010年最初の記念すべきGALLERY第一弾は、誰でも一目で女性オーナーだと分るフェミニンな雰囲気漂う、ショベル・ローライダーをベースとしたカスタムだ。4速スイングアーム車にスプリンガーフォークという変則的な組み合わせからして、女性オーナーらしからぬマニアックなセンスが感じられるが、それもそのはず、彼女のダンナ様は純正度の高いヨンパチ・パンヘッドをボバースタイルにして愛車としているマニアックな御仁。そのように夫婦二人してハーレーに興味があり、妻がハーレーカスタムに手を染めるとなると必然的にダンナ様の意思が大きく介在するのは当然のなりゆき。この特異なカスタムのスタイルも納得できるのではないだろうか。
スイングアーム・フレームにスプリンガーフォークとなると前後共サスペンションの見た目の印象が強くなりすぎ、ごちゃごちゃとしたイメージが付きまとうイメージがあるのだが、女性オーナーであるという事を強調するために外装は言うに及ばずフレームから陶器を思わせる滑らかな仕上げの美しいホワイトカラーで全体をペイントすることによって、カラーリングのインパクトを強調して見事にサスペンションの持つ重さのイメージを低減している。また、わざわざクローム仕上げのスプリンガーを選択したこともイメージの融合に貢献している点にも注目したい。これが普通のブラック・スプリンガーだったなら、もっと野暮ったい雰囲気になったはずだ。ハーレーカスタムにおいてフレームなど骨格とも言える部分のカラーペイントが及ぼすイメージの影響力の大きさについて改めて考えさせてくれる一例であった。
もちろん、おおまかなフォルムだけでなく細部の丁寧な仕様もシックス・モーターサイクルとしては手を抜いてはいない。と言うか、店のスタンスとしてビンテージなお宝パーツにも精密工作機を駆使した派手な造作にも無縁な当店としてはスタンダードで間違いがないと言えるスタイル以外には、きっちりとした細部の仕上げやオーナーの個性にあった乗りやすさを追求するところにしか活路を見出せないのが実情である。今回の例に漏れず、女性オーナーだということを十分に考慮して仕上げた。実例は下記を読んでいただきたいが、基本的考えとしてはこうだ。チョッパーに憧れを抱く野郎どもなら粗野で危険な雰囲気を求めるのが男の本能からしてスタンダードだが、女性はそんな子供じみた男なりのヤセ我慢などは求めていない。とにかく、自分の気持ちの良い範囲でないとモチベーションを維持できないようだ。安心・幸せが最優先事項である。そんな微妙な狭間で揺れ動く女心をばっちりと理解したと自負するシックス・モーターサイクルのチョッパーをとくとご覧あれ。


クロームメッキの74スプリンガーにフロント21インチホイールを履かせ、ハンドル廻りの5インチ・ドッグボーンライザーに幅広のドラッグバーの組み合わせは非力な女性オーナーの取り回しを考えたもの。もちろん、グリメカ・ブレーキマスターにミニスイッチ化はシックスでは定番のメニューだ。また最近は国内生産のグリップ競争が苛烈を極める中、その存在意味も危うい立場に置かれた海外生産品タル型グリップを使用。ボディカラーに合わせたホワイトカラーで、このバイクに華を添えている。

フレームと同じくスポーツスタータンクは、西洋陶器を思わせる透明感のある上品なホワイトカラーをベースに施し、そのペイントの上には過去、女心を掴みきれずに苦い体験をして住み慣れた神戸を去り、現在は遠く離れた鳥取県でただ一人作業にいそしんでいるという噂のコンチネンタル氏とのコラボ・ペイント。綺麗な空気で心身共にリフレッシュした今ならば、女心を十二分に理解できるとばかりに見事なゴールドリーフのカーリーと上品な文字のレタリングが施される。


鈍く光るポリッシュとブラックペイント、いかにもショベルらしい雰囲気に仕上げられたエンジン・ミッションは、きっちりとオーバーホールが施される。吸気系はソフトなフィーリングのSUキャブを装備。ステップは小柄な女性でもブレーキ・シフト操作がしやすいようにミッドステップ化。普段とは違い見た目だけの選択ではないところがミソである。オイルタンクに被された熱対策用の特別あつらえのレザーカバーも女性ならではの気遣いだ。

1.5インチのオープンベルト仕様ではあるが、女性オーナーであることを考慮して、ノーマルプライマリーカバーを加工、セルモーターを残してある。やはりキックオンリーだけでは、冬場のエンジン始動は言うに及ばず、信号待ちなどの突然のエンスト等、緊急時の対応は女性には辛いであろうというシックスなりの優しい心遣いである。ちと、懐かしい存在となったテイラーのプラグコードも車体に合わせてホワイトが選ばれた。


リア廻りは5インチ幅のフラットフェンダーを緩いアールのステーでスイングアームに固定した仕様でノーマルイメージを大きく一新したものになった。サイドナンバーに取り付けられたキャットテールは70年代うんぬんの男的嗜好で選ばれたものでは決してなく、女性的嗜好特有の「カワイイ」から取り付けられたものであることは明白である。タイヤはクラシックなパターンにばかり頼らずに、性能重視も含んでフロント21インチ・リア16インチ共、メッツラー社のME880を履いている。

ミッドブラウンの色味と一風変わったスタイルのソロシートは、シックスでは革製品なら任せとけのハンマーヘッドレザー製のワンオフもの。さらに、シートに合わせて製作されたハンドレールが特に目を惹くものとなっている。ハンドレールは本来、大きなバディシートのパーツではあるが、それをソロシートに使用、しかもシートがリジッドマウントなのでそれに伴いフレームのマウントホールを利用してボルトで直付け、シート固定マウントとして製作しているというのが面白い。


FEB .2009